東北海道に限らず日本全国各地では様々なイベントが開催されておりますが、たくさんのイベントの中には没個性的な地域イベントが時折見受けられるように思います。
夕刻には露店が並び、メインステージでは有志団体が歌やダンスを披露し、メインイベントはプロのアーティストを誘致して盛り上がりを演出し、そして最後は花火大会。ドーンと上がってパッと散る。一時的な盛り上がりはあるけれども長続きできない。その儚さはどこぞの町の地域振興策を見ているようで、何だか悲しい思いがいたします。
どこも地域の企業から寄付を募り、どこも似たような集客イベントを開催して、初回、第2回、第3回と継続して、10回くらいまで続くとあとはジリ貧。イベントの実行委員長は地域の有力者であったりするわけで、今回こそは過去最高の集客数を達成するぞとやる気満々。実行委員会のメンバーはその熱意に押されて、実行委員長の無理難題に今年もまた挑戦することになってしまうとかあるのではないでしょうか。一方、実行委員長が毎回変わるようなイベントであれば、自分の代で終わると末代までの恥になりますから、後は知らないが今回だけは何が何でもやり遂げるぞと必死になります。すでにイベントはマンネリ化しており、来場者ももう飽きているのですけれども、子供たちが行きたいというのだからまあしょうがないなという具合で家族揃ってイベント会場に行ってみるのです。子どもたちは喜び、大人たちはちょっとお疲れ気味。会場でビールでも飲みながら時間を潰している、ということになるのですから、イベント会場ではビールの売り上げが好調、ということになったりして、花より団子的なイベントも少なからずあるのではないかな、と思われるケースもあるように思います。
批判的に言っているように思われるかもしれませんが、お読みになられている方の中には同じような思いをお持ちになっている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。私もこれまでにたくさんのイベントを見てきて、またイベントの企画にも多少は関係を持ち、それなりに経験を積み重ねてまいりましたので、この際正直にお話しすることも必要なことと思っております。
ここで、地域のイベントを企画し、開催するために大切なことは何かを改めて考えてまいりたいと存じます。
まず、地域のイベントを企画するにあたっては、他の地域との差別化をどのように表現するか、ということが挙げられるでしょう。そのためには地域の特徴、他の地域にはない独自の価値を持つものを見出し、それをテーマにする、あるいはエッセンスとしてイベントの企画に取り入れていくなどして、企画を進めていくことが必要と考えます。そして、その先にあるのは地域の特徴となるものの認知度を高めていくこと、地域の認知度を高めていくこと、さらには地域の存在価値を高めることが求められるものと思います。
ここで地域の存在価値とは何か、その定義が必要となるのですが、この価値の定義についてはまた改めて述べる機会を持たなければならないと考えております。今回は地域の存在価値をどのように計測するかということについて考えてまいりたいと存じます。しかしながら地域の存在価値は簡単には計測できず、数値としての計測については地域の居住人口の増減や経済指標の推移などで評価するということになるのでしょうが、大切なのは地域の人々の幸福度や準拠の程度をどのようにして把握するかということであって、これは数値として確認することは難しいものです。そのため、地域の人々が地域のどのようなものに価値を持って生活しているかを、地域の人々が見出さなければなりません。この際、他の地域の、評論家やコンサルタントなどに意見を求めても良いのですが、それはあくまでも参考として扱うべきでしょう。決めるのは地域の人々です。他の地域からの目線はあくまでも他の地域からの目線であって、本当に評価できるのは地域の住民しかありえないと思っています。
そして地域イベントを開催するにあたって何より大切なことは主催者と地域の人々が楽しめるイベントとなることです。特に主催者が楽しめないイベントには来場者にもその空気が伝わります。そのようなイベントはやがて尻すぼみになり、消えていくことになるでしょう。地域の人々が楽しんでいることによって域外からも注目され、イベントの存在感が高まって、それが地域の存在価値を高めていくことに繋がるでしょう。
地域のイベントでは地域の特徴や独自の価値を表現し、地域の人々の心の拠り所になるような地域イベントを開催することが望ましく、将来に永続する地域イベントを実施したいのであれば、実施を焦らずに機運を盛り上げる下地作りから始めなければなりません。地域の特徴や独自の価値をどう表現するか、そのためには地域の特徴や独自の価値をどのように見出すか、その最も重要な課題を解決しなければなりません。この課題を解決するためには時間がかかります。というのは、簡単に解決するのであればこれまでに誰かが解決しているだろうからです。仮説を立てて検証し、そこで解消しない課題はさらに仮説を立てて検証する、この繰り返しが求められるでしょう。
地域イベントを開催するにしても、一度で大イベントを開催することにはイベントの目的としてもまた経済的にもリスクが伴いますので、仮説を立てて課題を抽出するつもりで最初は小さく、試験的な開催を行って、何ができて何ができなかったか、今後どのようにして解決するべきかを考えて継続開催に繋げていくことで、賛同者を募りながら、地域の存在価値を高められるイベントとして成長させることが求められるものと考えます。
地域イベントによって他の地域から見物人を呼び集めて多少でも収入に繋がればよいというような近視眼的なイベントを開催するのであれば、それもまたしっかりとした目的であって良いことであると思います。ただしそれは地域イベントではなく、例えばイベント会社が開催するロックフェスティバルのようなものとして扱うべきであって、地域住民が企画し、主催する地域イベントは、長い期間をかけて地域の存在価値をしっかり高めていき、将来に向けた意義深いイベントとして成長させていくものでありたいと思うのであります。
2021.08.30
コメント