私が旅に出る理由

今回のテーマは旅です。
東北海道には直接関係しない内容になるかもしれませんが、私の旅に対する思いを綴らずにはいられないという強い思いもありまして、敢えてこのテーマで進めてまいります。

私は旅が好きです。

旅好きが高じて国内旅行業務取扱管理者、総合旅行業務取扱管理者の両資格も取得しました。これらはお客様に旅行企画を提案し、またはお客様から旅行の依頼を受けて、運送機関と宿泊施設の手配、旅行の行程の管理、旅行先でのトラブル対応など、旅行に関する全ての業務を取り扱うことができるという資格なのですが、現在、私は残念ながら資格が活かせる仕事には就いておりません。その面ではつくづく勿体ないことをしているものだと思っています。

さて、私は旅が好きだと申し上げましたが、あくまで旅が好きなのであって旅行が好きだというのではありません。かといって旅行が嫌いだというのでもありません。ただし、旅と旅行は別なものであるということはこの際はっきりさせたいと思います。なお、上にも書いた旅行業務取扱管理者のことについても旅とはせず意識的に旅行と書いています。まず大きな括りとして旅があって、旅行は旅の中の一つの形態であるのだと私は考えています。
旅と旅行の違いを簡単に説明すると、例えば自分探しの”旅”とは言っても自分探しの”旅行”とは言いませんし、ときどきTシャツの背中に「旅に出ます。探さないでください。」という文字が書いてあるのを見ることがありますが、「旅行に出ます。探さないでください。」とは言いません。これだけ見ていても「なるほど、旅と旅行は違うのだな。」ということがお判りいただけることと思います。

旅行は予めその行程が決まっており、その行程通りに進んでいくものであるのに対して、旅は行程が決まっていない、またはある程度の行程が決まっていたとしてもそれには柔軟性があり、現地での変更があり得るものと考えています。それでも敢えて危険を冒すことはせず、自分の責任において安全と安心を確保しなければならないのは言うまでもありません。所持品やお金が無くなるだけではなく、時には生命の危険にも直面することもあり得ますので、安全と安心を意識しながら旅を続けていくことが必要です。私は旅を始める時には、海外では航空や鉄道、レンタカーを含む運送機関と宿泊施設の手配、そして旅先で会う人々とのアポイントメントは事前に行っておきますが、その他の細かい行程は現地での判断になります。また国内では主に宿泊施設だけを確保するか、時には宿泊施設も現地手配にすることもあります。だから団体旅行のバスツアーなんて、修学旅行と仕事の出張を除けば全く利用したことがありません。バスに乗って降ろされて、また乗って降ろされて、乗車と降車を繰り返すのは私には苦痛にしか感じられません。

私が旅が好きな理由として、第一に挙げたいのはその地域の人々との交流です。その地域の人々と交流することでその地域の文化の一端を感じることができます。次にその地域の人々の暮らしと文化を知ることです。ただし、ホテルでの宿泊では実際の暮らしを見て感じることは難しく、またホームステイも条件が整わなければ難しいので、その土地の市場に行ったり、商店街やスーパーマーケットなどを見て回ったり、実際に買い物をしたりして、どのような商品がどれくらいの価格で販売されているかを見て回るのが好きです。食事もできるだけ地域の人々がよく利用するレストランやパブに行きます。宿泊先のホテルから多少離れていても、地域の人々が集うお店に行きます。よくいう観光地のレストランは料金が高額になったり、観光客向けの濃いめの味付けになったりするので、なるべく行かないようにしています。
そして、第三にはその地域での体験です。体験といっても観光客向けのアクティビティではなく、地域の人々が普通にしていることを普通に体験するだけです。路線バスに乗って移動したり、ATMでお金を引き出したり、自動車を運転したり、また普通に飲まれているお酒を飲んだりなどのごく普通の体験をします。日本ではアドベンチャー・ツーリズムの推進による観光客のさらなる誘致が求められているようですが、地域の住民が普通に行っているのをほとんど見ることがないような体験をしてその地域のことが理解できるのかどうか、私には疑問が残ってしまいます。そのアクティビティを体験することで地域を知ることができる、さらに言えば地域の人々の生活や文化を体験するのであれば意味もありますが、その可能性がないような時間の無駄遣いはいたしません。
地域の人々と交流し、地域の人々の暮らしと文化を知り、そして地域での体験を行い、そのようにして数日間滞在する中で私はその地域で生活することができるかどうかを考えます。近い将来、私が高齢になった時にどこに住むかを考えるくらいの、現実的な目線で地域を見つめるようにしています。
私が旅に出る理由、それは旅先に溶け込み、旅先で生活をするためといっても良いかもしれません。

すでに私が公開している「Veľmi Dobre “スロヴァキア紀行”」についても、以上のような視点から書いてきたつもりでおります。

結びに一言。
旅に出る者にとっては旅先であっても、そこに住む人々にとっては生活の場である。私はそのことを常に心に留めながら旅をするようにしています。
皆様も旅先では地域の環境を守ることに努めていただき、また必要以上に羽目を外すことなく、「立つ鳥跡を濁さず」をしっかり守っていただきたく思います。

2021.09.28

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