コロナ終息後に行政が取り組むべきことは何か。

2020年初頭から続いてきたコロナウイルス感染症の拡大でありますが、2021年秋には第五波といわれる大規模感染の期間が終息し、日本国民の間でも自粛疲れに嫌気が差している、ということになれば、政府においては国民の支持率確保、地方行政においては地域住民からの苦情回避のためにも経済対策に取り組まなければならなくなる、というのは言うまでもないことであります。

かくして、取り組むことになる経済対策なのですが、各種メディアの偏った報道にも要因があるのですけれども、目立つことは2つありまして、一つには飲食業での酒類の販売再開、そしてもう一つには観光事業への支援施策ということになるようです。

私はそもそも酒類の販売規制については酒自体が悪いのではなく、人の酒の飲み方に問題があると考えております。酒は出さない、ではなく、酒を飲む時のルール作りが重要だと思っておりました。酒を飲むときには独酌、独飲、黙飲で、ゆっくりと味わって飲めれば良いのであって、それができないのだから酒を出さないということになったのでしょう。これはいわば躾の問題でありましょう。黙って酒を飲めない人たちの文化の低さが酒を悪者にしただけ。食事を始める際にいただく食前酒もダメというのは哀れな文化です。

まあ、飲酒に関してはそれくらいにしておきましょう。飲酒の新たな文化が始まることに期待をしております。

さて、今回問題なのは観光事業への支援についてであります。私はここに大問題があると考えております。
そもそもなぜ観光事業に税金を投入するのでしょうか。その必要がどこにあるのでしょうか。

おそらく関係者に言わせれば「コロナ禍で人流が泊まったことによって観光関連の業種、特に宿泊業が大きく打撃を受けている。人流が再開すれば旅行したい人も増えるはずだが、旅行にはお金がかかる。だから旅行に行きやすいように行政が支援してくれるのは当然だ(または、支援してくれるのはありがたい)。」となるのでしょうか。
そうだとすれば・・・ん?ちょっとおかしくありませんか?
旅行をしたい人が増えるのであれば、コロナ禍で旅行をしていない分、旅行用に蓄えていた資金もあるのではないかな?そのお金を使ってくれれば良いのではないかな?
そもそも旅行ができる人というのは可処分所得がある、裕福な人なのです。そこに支援をするということは、可処分所得が少ない人も旅行をしてくれということなのでしょうね。しかし裕福ではない人は無理をして旅行をしようなどとは考えません。その分を将来に何か不都合があった時のための貯蓄にし、リスク回避に役立てようとするでしょう。

上記のような話をすると観光関連の仕事をされている方から「商売の邪魔をするな」と言われてしまうかもしれません。確かにコロナ禍によって観光関連の業種(※)は大変な思いをしてきたのだろうとお察しします。しかしながら、中国人旅行者による“爆買い”が流行語となった2015年頃からのインバウンド客の増加に伴って国内の団体旅行客から外国人旅行者をターゲットとした観光地ビジネスが増加し、MICEというビジネスイベントの誘致、外国人旅行者のFIT(Foreign Independent Tour/海外個人旅行)化などもあって運輸業、宿泊業を含めた日本の旅行業界は大きくその姿を変えてきたはずです。そしてその背景には東京オリンピックの誘致から続く、当時の安倍政権がすすめてきた観光立国の政策があり、そこには多額の国税が投入されてきたはずです。それをこのたびのコロナウイルス感染拡大で大きく打撃を受けたのだから支援は当然というのであれば、その他の業界で大変な思いをされてきた方々はどうすればよいのでしょう。
  (※) 私は観光業という業種はないと思っておりますので、あえて「観光関連の業種」としています。

「それじゃあ、お前はどうするのが良いんだ?」と言われそうですね。

はい、それでは私の考えを申し上げましょう。

私が今、最も支援しなければならないと考えるのは教育関連への支援です。
合わせて子育て支援、出産育児支援も必要であると思います。
さらにこれまでと同様に、医療と福祉への支援も継続して必要です。
観光関連業種への支援はその次の段階でも良いと考えています。

世の中には大学に進学したけれども大学のキャンパスに行くことができないでいる、または行くことができないでいた学生たちがいます。大学には資格を取ることを目的にしている学生もいれば、テーマをもって研究に打ち込む学生もいます。学生が研究をするのにはただ机に向って、パソコンのディスプレイに向かっているだけではなく、本も読まなければならないし、もちろん、今ではオンラインミーティングもあるとはいえ、他の人たちとの議論もしなければなりません。その支援の方が絶対に大切なはずです。
とりわけ短期大学に進学した学生は、コロナ禍において大きく不利益を被ってきたはずです。中には一度も対面授業がないまま短期大学を卒業した学生もいるはずです。
日本の未来のみならず世界の未来を担う子供たちへの教育は本当に大切です。コロナ禍で十分な教育ができなかったと少しでも思うのであれば、税金を観光事業の支援ではなく教育の支援のために、目先の利益ではなく未来の利益のために役立てるべきでしょう。

医療と福祉への支援はこれまで通りに、むしろ今後新たな感染症が流行することを想定して、医療体制の見直しを進めることが必要でしょう。何と言ってもこのたびのコロナ禍にあってコロナウイルス感染症によってたくさんの人々が命を落としたことを私たちは決して忘れてはならないのです。
福祉については、特に社会的弱者に対する支援をしっかりしましょう。社会的弱者への支援とは「弱い者が弱いままで認められる社会づくり」であると考えています。弱い人を強くするのではなく、弱いままで暮らしやすい社会にする。これは簡単なことではありませんが、だからこそしなければならないことなのです。

豊かな社会に、それも経済的によりもむしろ文化的に豊かな社会になることによって、旅に出る人々も増えてくるものです。それは近代の日本において江戸の民衆文化の発展によって善光寺参りや伊勢参りが流行したことも例に見ることができます。そのためには教育、そして福祉の拡充が必要であり、不可欠であると考えます。

私は旅が好きですし、総合旅行業務取扱管理者、国内旅行業務取扱管理者の両資格も有しています。ですから、私は他の方々に比べて旅に対する強い思いと旅についての知識を多少でも持ち合わせているつもりでいます。税金を投入して無理に旅行をさせて一体何が残るのか。おそらくは旅行業者をはじめ観光関連の業者への一時的な収入増があるかもしれません。しかし、そのようにしたところで決して長続きするものにはならないでしょう。旅に出ることを促す前にやるべきことはたくさんあるはずです。大切なことはこの国を、そしてこの地域の未来を次の世代にどのように残していくのかを考えて行動することであり、そのためにもこのたびのコロナ禍での経験を生かし、正しい行動に繋げていくことを、特に政府、行政には強くお願いしたいものです。

2021.10.19

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