地域力を考える。

今年初めての投稿となります。

昨年の12月15日の発信以来、1ヵ月以上にわたって新たな発信をしておりませんでした。
毎日が慌ただしく過ぎており、ゆっくりと考えることができずにおりましたが、ようやく少し落ち着いてきた感があり、そろそろ新たな発信を、と思い、執筆を再開いたします。

昨年秋から年末まで、数回にわたってSocial Capitalを考えておりました。
Social Capital、そのまま日本語にすると「社会資本」であるわけですが、日本では資本主義が高度に発達し過ぎたためか社会よりも資本の方に視点が向いているようであり、「社会資本」は生活インフラをいうものであって、社会がどのようにして成立しているかよりも、既存の社会での暮らしをいかに便利に、快適にすることができるかに重点が置かれて「社会資本」(=生活インフラ)が定義されています。したがって社会が成立するために必要な要素であるSocial Capitalは「社会関係資本」などと訳されております。
私はSocial capitalこそが「社会資本」であると考えており、また、いずれ「社会資本」は生活インフラを意味するものからSocial Capitalを意味するものに変わっていくことを望んでおります。これについては今後の社会の変化の中で少しずつ修正されていくように思っております。
そして、やがて社会は経済を中心に動く資本主義から人と人との関係によって動いていく社会に変わっていくものと考えています。私は、この人と人との関係によって変動する社会を、仮に「社会資本主義」と呼ぶことにしております。「社会資本主義」はあくまでも仮の呼称でありまして、どのような呼称が相応しいかは今後の社会情勢が決めていくことになるものと考えます。
以上、Social Capitalについて今まで考えてきたことを簡単にまとめてみました。
私は今後も引き続きSocial Capitalを考え、研究を重ねてまいります。

さて、一旦Social Capitalから話題を変えまして、今回は表題にも掲げたように「地域力」について考えてみます。
とはいえ、地域力はSocial Capitalに深く関連するものであるので、話題を変えるといっても決して無関係ではございませんが。

「地域力」という言葉は決して新しいものではなく、1995(平成7)年1月17日に発生した阪神淡路大震災の復興活動の中でこの言葉が使われていたようです。また、2010(平成22)年頃には国や地方自治体において「地域力」に対する関心が高まっていたように思われます。私が住んでいる北海道では2009(平成21)年から調査が行われ始め、現在までに地域力の向上が取り組まれておりますし、国でも総務省の地域力創造グループにおいて地域力創造・地方再生の政策が進められ、「定住自立圏構想」や地方への移住・交流推進に向けた「地域おこし協力隊」などの地域力に関する事業が進められています。
このように「地域力」への関心は確実に高まっているはずなのですが、一般に、特に私たちのように地方に住んでいる者たちには関心があまり高くなっていないように思っております。でも心配することはございません。「地域力」の政策、施策は進められているにも関わらず、それらの政策、施策が地方の住民たちの身近なところで行われておらず、実際の地域社会での生活において具体的な成果にはなかなか結びついていないように思えるからです。つまり、これから関心をもっても全く遅くはないのです。ご安心ください。

「地域力」を考えるにあたっては、まず最初に「地域力」とは何か、ということを確認しなければなりません。そこで地域力の定義を調べてみましたら、たとえば私が住んでいる北海道では「行政をはじめ、住民や自治会、NPO、企業など地域の様々な人々が協力し合いながら、身近な課題を解決したり、地域を活性化させる力」(総合政策部地域創生局地域政策課「地域力とは」2017年7月20日)と定義されております。また、Wikipediaを見てみましたら「地域社会の問題について市民や企業をはじめとした地域の構成員が、自らその問題の所在を認識し、自律的かつ、その他の主体との協働を図りながら、地域問題の解決や地域としての価値を創造していくための力」と書かれておりました。その他にも各都道府県、市町村ごとに様々な定義をされていることと思っておりますが、ほぼ一様に自主、自律による地域問題の解決や地域社会の価値向上などを促進する力であるように思っております。
このように「地域力」の定義や意味を考えてまいりますと、地域力を高めることは手段であって目的ではないことがわかるのですが、ともすれば地域力を高めることが目的化してしまうことがあり得るように思います。何のために地域力を持ち、高めていくのか。そこをしっかりと把握し、目的と手段が逆転しないことを意識して取り組むことが求められるでしょう。

また、「地域力」という言い方はとても使いやすいものであるように感じられます。地域力の向上を目的にしていると、そのうちに「地域力」という言葉を使っていれば、何らかの地域の振興策や活性化施策を立案して実行していく中で地域力が醸成されるというような、何か錯覚のような感覚を覚えてしまうかもしれません。特に先ほどご紹介した地域力の定義は国、都道府県、市町村などの行政からの発信であるので、特に地域振興、地域活性化という言葉と結び付けて解釈しがちになりそうです。ただし、「地域力」については決して行政からの働きかけがあって始まるものではなく、先にも示されたように自発的、自律的なアクションがあることが重要であると考えております。“言われてからやる”というものではなく“言われる前にやる”ことも必要であって、それが「力」となって定着するものであると考えます。そのためにはまず地域内での自主的なコミュニケーションが必要となるように思っております。地域住民が言いたいことが言える仲、気の置けない仲であることが求められるように思うのです。これは行政が主導するものではなく、住民がそれぞれに意識して醸成するものであると考えます。

余談になりますが、私は若かりし頃、1980年代後半から1990年代前半までの間、地域振興についても考えておりました。そこで地域振興、または地域活性化というものが何をゴールにしているのかわからなくなってきたことがありました。そこで私は考えを巡らせている間に「地域振興」、「地域活性化」という言い方があまりにも便利すぎて具体性に欠けているためではないかと考えるようになりました。そのため、地域振興、地域活性化を語る場合には対象となるのが地域の経済循環なのか、文化活動を含めた地域内の交流活動なのか、何をどのように「振興」させ、何をどのように「活性化」させるのかを明確にするべきだと考えるようになりました。
同様に地域力についても、繰り返しの話になりますが、何をどのようにすべきか、地域問題の解決、地域社会の価値向上、あるいは地域の経済循環の振興、地域内の文化活動や交流活動の活性化といったテーマ、目的を、必ずしも明確にはしないとしても、少なくとも理解をした上で地域力の醸成に取り組むべきであると考えます。

また、地域力については一朝一夕で育まれるものではなく、長い時間、長い年月をかけて取り組まれるべきものであると考えます。ですから、これも繰り返しになりますが、行政が主導するのではなく地域内での自主的、自発的な取り組みが必要になります。なぜならば、行政は予算が付けば取り組むが、予算が付かなければ全く着手しなくなるからであります。このような体質では長続きすることはあり得ません。地域力は行政の力を当てにするべきものではなく、ましてや行政の金(=税金)を当てにするものでもなく、地域の住民が育み、醸成するものであるのだということを肝に銘じておく必要があると考えております。

合わせて、地域力を高めるということにおいては、特に2000年以降に急増した特定非営利活動法人(NPO法人)が地域力の担い手として注目されることもあろうかと思います。しかしながら、今やNPO法人は行政が手放した施策の代行機関、いわば行政の下請け団体化しており、例えば指定管理者制度によって安価な指定管理料で行政に都合の良い様に扱われる事例も見受けられるようです。そのため、地域力の向上のためにNPO法人を設立することは得策とは思えません。また、町内会にその役割を担っていただくことも考えられるかもしれませんが、そもそも現行の町内会がしっかりと機能しているとも思えません。
そこで地域力を向上させる役割を担う一番手と思っているのは営利や利害を伴わない集まり、例えるならば「サークル」のような集まりがあるのだろうと考えております。一例を示しますと、週に1回のゴミ拾いサークルとか、毎月○○日のウォーキングの会とか、そのような同一の目的を持つ人々が集まって何かしらのコミュニケーションを行うということから時間、空間の共有が生まれ、共通意識が育まれて、やがて地域力の醸成に繋がるように思っております。加えて、サークルというものは一人が一つのサークルのみではなく複数のサークルに参加していることもあります。そのために多面的な繋がり、多面的なコミュニケーションに繋がっていくことにも期待が持てると考えます。

戦後復興、一億総中流、核家族化、終身雇用制度の崩壊などと時代が進むにつれて、人と人とが繋がり合う機会が少なくなっていることは事実として否めません。現代社会において、地域がどれだけ重視されているのかも改めて検証する必要があると思っております。そのような中で改めて「地域力」に注目することは十分に意味があることであろうと考えるのであります。今一度地域が持つ力、これから地域に必要とされる力を様々なテーマに沿って研究(観察/分析/仮説/実行/評価/検証)していくことが求められる時期にあるのではないでしょうか。

2022.1.29

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