懐かしくて新しい「どん菓子」の魅力

東北海道の人々

[2017年12月17日付で別サイトにて掲載した記事の再掲です]

— 本別町・つしま商店さん (17.07.22) —

「どん菓子」の実演を見に行きました。

2017年7月22日(土)

去る7月22日(土)、足寄町に行き、つしま商店さんの「どん菓子」の実演を見てきました。

つしま商店さんといえばこの軽トラック。軽トラックは移動用のみならず作業用に、工房としても利用されており、たいていはテントに併設して一体となっています。

この日は地元の医療法人社団である三意会が主催する「第4回三意会まつり」が行われておりました。つしま商店さんはこのイベントに招かれてどん菓子実演を行うのでございます。

こちらのテントの中を覗くと、つしま商店さんの社長である対馬憲二さんがいらっしゃいました。

緑のシャツでこちらに微笑む対馬さん。
筆者も日ごろからたいへんお世話になっております。

この緑のシャツ、大東文化大学のラグビーシャツなのです。対馬さんは大東文化大学でラグビーをされていました。同好会ではなく、体育会のラグビー部です。関東大学ラグビーリーグ戦グループで有名な大東文化大学のラグビー部です。

そして、画像の右に見えるのが改良に改良を重ねたどん菓子製造機であります。

さぁて、これから大人には懐かしく、子どもたちには新しい「どん菓子」の実演の始まり始まり!

これが「どん菓子」だ!

どん菓子をつくる機械がこちら。

中央の右の機械がどん菓子の製造機の本体です。この中に乾燥させたトウキビ(トウモロコシ)やお米を入れ、下から火で炙ってクルクルと回しながら圧力をかけていきます。本体の左側にあるのは「ドーーーン!」のあとに飛び出たどん菓子を受け止めるためのカゴです。
といっても、説明だけではなかなか伝わらないかもしれませんね。
実際にどうなるかを順を追ってお話ししましょう。

画像では止まっていますが、右側の本体は動いています。クルクル回っています。カゴとの間にある板は風除けの囲いです。本体を火で炙っておりまして、風が吹くと熱が逃げてしまうのですね。全体をムラなく温めていくための必需品、ということです。対馬さんはゆっくりと待っています。目線の先にあるのは圧力計。十分な圧力がかかるまではこのまま待機です。

しばらくして本体内部の圧力が上がってくると、対馬さんはラッパを吹きます。ピストンが付いていない、昔風のラッパです。進軍ラッパのメロディーが流れると「そろそろ『ドーーーン!』の音が鳴るよ~」の合図です。
ちなみにこのラッパを使い始めたのは4,5年前でして、それまではラッパを吹いていませんでした。何か威勢の良い合図で周囲の注意を促すことがしたいということで吹き始めたラッパは、使い始めた頃には音も少し控えめでしたが、しばらく吹いている間にすっかり上達して、今ではどん菓子の実演にはなくてはならないものになりました。

さて、ラッパの響きからおよそ1、2分・・・

板の囲いを取り外し、カゴを本体にセットします。

さあ、間もなくですよ~。

「ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピーーーーーーーッ!」


ホイッスルが鳴り響きます。
周りで見ている方々はよくご存じのようで、一斉に耳を塞ぎます。私は何度も見たことがあるので、普段通りに見ていますが・・・。

そして、そこからの~~~

「ドーーーン!」

大きな音と立ち上る白い煙、そして周囲で見つめるお客様たちの歓声、直後に漂う香ばしい匂い。全てが一つのストーリーの如く展開されます。
そう、きっとこれはどん菓子づくりという名のエンターテインメントなのですね。

「ドーーーン!」の煙が消えると、かごの中にはできたてホヤホヤのどん菓子が入っております。

角度を変えると、ハイ、このとおり。

さらに、アップで。

これがどん菓子ですね。地域によってはポン菓子ともバクダンともいわれるそうですが、いずれにしても「ドーーーン!」が「ポーーーン!」に聞こえるのか、爆弾でも爆発したような音なのか、ということで、製造方法に由来する商品名であることには変わりないでしょうね。ここでは「どん菓子」と呼ぶことにしています。ご了承くださいませ。

さあ、これでどん菓子のできあがり!

・・・というのはまだ早くて、ここまでの工程が一次加工。
これから先に二次工程の味付けがございます。

この味付けの工程は、豪快で派手な一次工程に比べると少し地味にも思えますが、この二次工程がどん菓子の味を決めるのにたいへん重要な工程なのですね。

・・・しかし、この味付けの工程を撮影していなかった私。ゴメンナサイね。。。
ここは文面でご紹介いたします。

ちなみに、ですが、味付けなしというどん菓子もあります。実際に味付けなしのどん菓子を食べてみると素材そのものの味と香りがして美味しいのですよ。もちろん、甘い味付けをしたどん菓子もとっても美味しいです。

さて、その味付けの工程につきましては・・・
まず、一次加工のどん菓子を樽の中に入れます。
次に、あらかじめ用意しておいた、砂糖と水を煮詰めた蜜を、樽の中のどん菓子にかけます。
さらに、それを一気に混ぜ合わせます。一気に混ぜないとムラになってしまうし、蜜が冷えると固まってしまうので、ここは時間との戦い。そして腕力が必要なところです。

では、その先の工程です。

味付けをしたどん菓子は固まりやすいので、木べらでさくさくとほぐします。
ほぐし作業はこのように枠付きの網の上で行っています。

ユサユサと揺すってからどん菓子を樽の中に戻し、さらにもう一度網に戻して、さらに優しくほぐしていくと、どん菓子に紛れているトウキビの皮や砕けて小さくなったトウキビなどが次第に取り除かれていきます。

固まりがなくなったところで、いよいよどん菓子の完成です。

つしま商店さんのどん菓子は、通常は空気が通らない厚手の透明袋に入れて、乾燥剤を封入し、しっかりとシーリングをして出荷します。賞味期限までしっかり美味しくお召し上がりいただけます。
8列トウキビ(トウモロコシ)、お米、玄米、マカロニどん、黒豆、小豆、だったんそば・・・充実のラインナップで製造しておりますよ。

今回はイベントでの実演ですので、その場でお召し上がりいただけるようにしておりまして・・・

別に設置されている食券売り場で先にチケットを購入して、商品と交換するというシステムでありました。

対馬さんのどん菓子の実演を見ていると実に面白く、迫力ある「ドーーーン!」の回数を重ねるごとに初めは物珍しさで見物しているお客様も次第に興味深く見つめるようになっていきます。
なぜ面白いのかをいろいろと考えていると、まず第一に目の前で製造されるライブ感なのだろうと思います。「ドーーーン!」の音に子どもたちが驚き、直後に漂う香ばしい匂い。実演ならではのライブ感はなかなか体験できないものです。
また、おそらく理科の実験のような不思議さもあるのでしょう。硬いトウキビやお米がフワフワになってできあがる瞬間には子どもはもちろん大人にも興味が湧いてくるものなのではないかと思います。
そしてやっぱりどん菓子の安全性と美味しさですね。
後述いたしますが、対馬さんが打つどん菓子は製造も味付けも目の前で行われます。お客様にも安全で安心なお菓子であることは見ていただければご理解いただけることと思います。さらに食べて美味しく、対馬さんのどん菓子は何度食べてもまた食べたくなってくるのです。ファンが多いのも頷けます。

対馬さんとどん菓子の実演との出会い

対馬さんがどん菓子を始めたのは2004年だそうです。

本別町では市街地で初となるコンビニエンスストアを営んでいる対馬さん。1990(平成2)年に開店してから、店頭では駄菓子売りやお米の店頭精米、焼き鳥や焼き芋の焼きたて販売などのイベントも随時行っていて、他にも面白い企画、地域の皆さんが楽しめる、目玉になる企画を探していたそうです。

そして、開店から12年が経った2002年の夏のある日のこと。

対馬さんの次男さんは足に障害がありまして、その次男さんと一緒に、障害者と健常者とのふれあいを目的とした特別列車「友情列車ひまわり号」に乗って置戸町まで出かけたのでありました。本別ー置戸間といえば、現在は廃線となったふるさと銀河線(旧・JR池北線)ですね。懐かしいです。

さて、置戸町に行った対馬さん親子は、そこで開催されていた地元のおまつりに参加しました。
その会場で対馬さんは「ドーーーン!」の音を聞きました。「ドーーーン!」の音が出る場所に近づいていくと、そこで行われていたのがどん菓子の実演。

「これは面白そうだなぁ~」

そう思った対馬さんは、会場で実演を行っていた方にどん菓子の製造機を製造している会社の連絡先を聞き、さっそく電話をしてみたのだそうです。ところが、どん菓子の製造機というのが予想よりも高額のもので、それ以降はどこかに中古の機械がないだろうかと知人を介して探していきました。新聞でどん菓子の事業を辞めるという記事を見ると直接会いに行くこともあったそうです。それでも、機械を手放してくれる人はなかなか現れませんでした。自分で細々と続けていく人、娘さんが後を継ぐから譲れないという人など、皆さんどん菓子には各人各様の思い入れがあったのでしょうね。

そのような繰り返しの中で月日が過ぎていき、2004年の初秋のある日、帯広にある米問屋さん・食創のご担当さんとお話をしていたら、広尾町の山畑さんという人が腰を痛めてしまってどん菓子の商売を続けられないようだ、ということを聞きました。対馬さん、このお話を聞くとすぐに連絡先を聞いて電話して、すぐに広尾に飛んで行ったのだそうです。
山畑さんにお会いして、どん菓子を打つのを見ると、山畑さんは「機械、持って行ってもいいよ」と言ってくれたそうです。「代金を・・・」と対馬さんが言うと山畑さんは「後払いで」と仰ったのでそのまま持ち帰ることとなりました。かくして苦節2年、対馬さんはついにどん菓子の機械を手に入れることができました。

本別町では毎年6月、7月、9月に本別町商工会青年部主催の「夜出かけナイト」という、商店街イベントがあります。このイベントは商店街の各店舗が店頭にワゴンや露店を出したり、道の駅・ステラほんべつの広場でバンド演奏を行ったりする本別町の名物イベントです。対馬さんはどん菓子の初実演を2004年9月の「夜出かけナイト」に定めて、広尾の山畑さんにご指導をいただきながら、どん菓子製造の練習を続けました。

そうしてついにどん菓子製造デビューの日。
どん菓子製造機の内圧を高めるためのフタが練習ですり減っていたので、これを新しいものに取り替えて、いざ本番!
「ドーーーン!」
初めは膨らみが足りず、期待したようにはできなかったそうですが、改めて「ドーーーン!」のタイミングや圧力の調整などを山畑さんに電話で確認して2度、3度と「ドーーーン!」を続けて手応えを感じた対馬さん、5回目の「ドーーーン!」で、「やったぁ!成功だぁ!」

一度成功すればあとは経験です。対馬さんはどん菓子製造のスペシャリストとなり、どん菓子がつしま商店の主力商品になり、現在の「どん菓子のつしま商店」になっていくのでありました。

どん菓子の製造にあたっては、機械を十分に使うために手入れは欠かせません。
どん菓子の製造機の手入れというのはなかなか難しいものであって、どん菓子は爆発の時にとうきびや米を一気に膨らませるため、その爆発に耐えられる補強も必要です。ネジ1本、爆発で完成するどん菓子を受けとめるカゴのネットの素材など、対馬さんは細かいところに気を配っていて、現在のどん菓子の製造機は改良に改良を重ねた、対馬さんオリジナルの製造機になっています。

奥深い「どん菓子」の世界

どん菓子が昔懐かしいといわれるのは、かつてはどん菓子の実演のおじさんが町にやってきて、どん菓子を作ってくれたということがあったからでしょうね。町のみんながトウキビや米を持ってきて、どん菓子を作ってもらいました。「ドーーーン!」と大きな音が鳴るのでみんなで耳をふさぎながら、香ばしい匂いとともにどん菓子ができあがるのを楽しんでいたものでした。
ところが、近年になるとどん菓子のおじさんも町に来なくなりました。核家族化と地域コミュ二ティの変化に伴って、大きな音が迷惑だということもあるのでしょう。また、食品衛生の意識が強くなり、工場で製造される袋菓子が安全であるという考えも広まったのでしょう。どん菓子を生業にする業者も少なくなっていったのでしょうね。そういうこともあって、対馬さんがどん菓子の製造機を入手することにもなったのかもしれません。

どん菓子の原料は、基本的にはトウキビ(トウモロコシ)です。ただし、対馬さんがどん菓子に使うトウキビは本別町産の8列トウキビしか使用しません。対馬さんのどん菓子の原料はできる限り本別町産にこだわります。また、乾燥状態についても一定の水分が必要であり、水分量には細心の注意を配っています。
また、お米もどん菓子にすることができます。お米も玄米も、また穀物類で黒豆や小豆もどん菓子の製造機にかけます。黒豆の「どん」はビールのおつまみには最高ですし、お湯で煎じて黒豆茶にすることもでき、そのまま炊飯器でご飯と一緒に炊けば黒豆のご飯も簡単に作ることができます。さらに挽いて粉にすれば”きな粉”にもすることができます。小豆の「どん」もお米と一緒に炊飯器で炊けば簡単に赤飯ができます。すごいぜ、どん菓子!

さらに、対馬さんのどん菓子への探究心はとどまらず、いろいろなものをどん菓子にしようと日夜取り組んでいます。ダッタンそばのどん菓子は、黒豆と同様にお湯で煎じてそば茶にすることができます。
中でも人気があるのはマカロニをどん菓子にした「マカロニどん」。硬いマカロニをサクサクのどん菓子にします。これがけっこう美味しいのです。

先ほど、近年は食品衛生の意識が強くなってきたというお話をしましたが、どん菓子は製造工程で完全に熱処理をしますので、衛生面でも全く問題のないお菓子と言って間違いないですね。
さらに、対馬さんがつくるどん菓子の味付けは水と砂糖を煮詰めてつくる蜜を基本として、それぞれできあがるどん菓子の種類によって若干の違いはあるものの、食品添加物は一切使用しません。対馬さんのどん菓子は家庭にある調味料で味付けしますから安全で安心であり、かつ真面目で素朴で純粋で、飽きの来ない味に仕上がります。そこには対馬さんの性格が表れているように思います。

「どん菓子」とラグビースピリット

冒頭にもお話ししましたように、対馬さんといえばラグビー。
対馬さんは還暦を過ぎた現在も、「十勝クラシックラガー」というラグビーチームに所属する選手であり、試合や大会にも出場されます。また、時間がある時には小中学生にラグビーの指導をしています。

私は常々、対馬さんが打つどん菓子の実演とラグビーとの間には共通するものがあるように思っています。
それが何なのかは私自身まだ確信を持てていないのですが、対馬さんにはどん菓子を打つ時もラグビーのお話をされる時も、変わることのない真摯な姿勢と明るさを感じます。

また、対馬さんはどん菓子を打つ時にはいつもラグビーシャツを着ています。対馬さんは日ごろから「ラグビーシャツを着ると気合いが入るんだよね」と仰っています。対馬さんはラグビーシャツが似合う方ですし、きっとラグビーシャツを着ると動きやすいということもあるのでしょう。そして、私にはその姿にラガーとしての誇りを胸に、真摯な姿勢と明るさをもってどん菓子を打っているようにも思えるのです。

対馬さんのどん菓子には他のお菓子にはない個性、独自の魅力があり、どん菓子を頬張ると不思議と元気になれるのです。きっと対馬さんのどん菓子には製造工程の中でラグビースピリットが加えられているからなのかもしれませんね。

つしま商店」さんの基本情報

店舗名: 有限会社 丸坂 つしま商店
      (ゆうげんがいしゃ まるさか つしましょうてん)
所在地: 089-3334
     北海道中川郡本別町北5丁目6番地12
電話番号: 0156-22-2204
FAX: 0156-22-2204 [電話番号と同じ]
ホームページ: http://www.netdepon.com/ 
          【ネット販売も承っております。】
E-mail: pongashi@amail.plala.or.jp
営業時間: 9:00~18:00
定休日: 日曜日
   (イベントへの出店や実演のため出張することがあります)

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