首都圏1都3県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)に北関東3県(茨城県、群馬県、栃木県)を加えた面積よりも広い面積(35,583.60km2)を有する東北海道において、地域内での連携をさらに強化し堅固なものにしようとするならば各市町村間の交通について考えることは有効であると考えます。
そこで今回は東北海道の交通事情を考察し、その上で将来の交通のあり方について考えを巡らせてまいりましょう。
まず道路網について、東北海道の地域内を通る国道の路線の、起終点と経由地を挙げてまいります。
なお、路線の中には私が設定する東北海道の地域外の市町村もありますので、その場合はその起終点の市町村、または途中の経由地となる市町村を括弧書きで記載します。また、起終点と経由地の順は「一般国道の路線を指定する政令」に定められた順に挙げてまいります。
国道名 | 起終点・経由地 |
国道38号 | (滝川市 – ) 新得町 – 清水町 ‐ 芽室町 ‐ 帯広市 ‐ 幕別町 ‐ 豊頃町 ‐ 浦幌町 ‐ 釧路市(音別町) ‐ 白糠町 ‐ 釧路市 |
国道39号 | (旭川市 ‐ ) 北見市 – 美幌町 ‐ 大空町 ‐ 網走市 |
国道40号 | (旭川市 – ) 幌延町 ‐ 豊富町 ‐ 稚内市 |
国道44号 | 釧路市 ‐ 釧路町 ‐ 厚岸町 ‐ 浜中町 ‐ 根室市 |
国道232号 | 稚内市 – 豊富町 ‐ 幌延町 ( – 留萌市) |
国道236号 | 帯広市 ‐ 中札内村 ‐ 更別村 ‐ 幕別町 ‐ 大樹町 ‐ 広尾町 ( ‐ 浦河町) |
国道238号 | 網走市 – 北見市 ‐ 佐呂間町 ‐ 湧別町 ‐ 紋別市 ‐ 興部町 ‐ 雄武町 ‐ 枝幸町 ‐ 浜頓別町 ‐ 猿払村 ‐ 稚内市 |
国道239号 | 網走市 – 北見市 ‐ 佐呂間町 ‐ 湧別町 ‐ 紋別市 ‐ 興部町 ‐ 西興部村 ( ‐ 留萌市) |
国道240号 | 釧路市 ‐ 津別町 ‐ 美幌町 ‐ 大空町 ‐ 網走市 |
国道241号 | 弟子屈町 ‐ 釧路市 ‐ 足寄町 ‐ 上士幌町 ‐ 士幌町 ‐ 音更町 ‐ 帯広市 |
国道242号 | 網走市 ‐ 北見市 ‐ 佐呂間町 ‐ 湧別町 ‐ 遠軽町 ‐ 北見市 ‐ 置戸町 ‐ 陸別町 ‐ 足寄町 ‐ 本別町 ‐ 池田町 ‐ 幕別町 ‐ 帯広市 |
国道243号 | 網走市 ‐ 大空町 ‐ 美幌町 ‐ 弟子屈町 ‐ 標茶町 ‐ 別海町 ‐ 根室市 |
国道244号 | 網走市 ‐ 小清水町 ‐ 斜里町 ‐ 標津町 ‐ 別海町 ‐ 根室市 |
国道272号 | 釧路市 ‐ 釧路町 ‐ 標茶町 ‐ 厚岸町 ‐ 別海町 ‐ 中標津町 ‐ 標津町 |
国道273号 | 帯広市 ‐ 音更町 ‐ 士幌町 ‐ 上士幌町 ( ‐ 上川町) ‐ 滝上町 ‐ 紋別市 |
国道274号 | (札幌市 ‐ ) 清水町 ‐ 鹿追町 ‐ 士幌町 ‐ 上士幌町 ‐ 足寄町 ‐ 本別町 ‐ 浦幌町 ‐ 白糠町 ‐ (未開通区間) ‐ 釧路市 ‐ 鶴居村 ‐ 標茶町 |
国道275号 | (札幌市 ‐ ) 中頓別町 ‐ 浜頓別町 |
国道333号 | (旭川市 ‐ ) 遠軽町 ‐ 佐呂間町 ‐ 北見市 |
国道334号 | 羅臼町 ‐ 斜里町 ‐ 清里町 ‐ 小清水町 ‐ 網走市 ‐ 大空町 ‐ 美幌町 |
国道335号 | 羅臼町 ‐ 標津町 |
国道336号 | (浦河町 ‐ ) 広尾町 ‐ 大樹町 ‐ 幕別町 ‐ 大樹町 ‐ 豊頃町 ‐ 浦幌町 ‐ 釧路市(音別町) ‐ 白糠町 ‐ 釧路市 |
国道391号 | 釧路市 ‐ 釧路町 ‐ 標茶町 ‐ 弟子屈町 ‐ 小清水町 ‐ 網走市 |
国道392号 | 釧路市 ‐ 白糠町 ‐ 浦幌町 ‐ 本別町 |
国道450号 | (旭川市 ‐ ) 白滝村 ‐ 遠軽町 ‐ 湧別町 ‐ 紋別市 【全線が旭川紋別自動車道 /遠軽町(遠軽IC)~紋別市は未供用 】 |
以上、国道は24路線あり、これらを地図上に配置すると以下の地図のようになります。路線網は手書きですので雑な感じではあり、それに加えて上記の表の国道にはそれぞれに重複区間があって複雑に絡んでおりそれらの重複区間まで表現することはできませんでしたが、ほぼ正しくトレースしていると思います。

この地図を見ますとこの地域の国道網が粗いながらも各地を網羅した路線となっており、どこか1か所に集中しているのでないことがお判りいただけることと存じます。例えばモスクワやパリのように放射線状の路線になっていれば、その中心となっている場所がその地域の中心と考えられるのでありますが、東北海道の国道はそのようにはなっておりません。この道路網の状態を見ておりますと、この地域では中心となる場所がなく、言い換えれば飛び抜けて目立つ地域がなく、どの地域も並列的な関係にあることを表しているように思っております。
なお、これらの国道には上記の表に括弧書きで記載しているように、滝川市、旭川市、留萌市、浦河町、上川町、札幌市といった東北海道のエリア外である地域に繋がっている道もあります。これらの全てを地図上に表示するとなると、例えば旭川市から札幌市へと続く国道はもちろん、さらに札幌市から他市町村に繋がる国道も含めて北海道の全ての国道を表示しなければ国道の全体像を把握することができませんが、今回は東北海道地域のみに限る表示としておきます。それでも、このように東北海道だけを見ていても網の目、蜘蛛の巣状と思われる国道網になっております。
また、北部を通る国道が1路線しかなく、ここにはできれば南北を縦貫する路線がもう1路線あればさらに良いのではないかと思うところでもあります。ただし、当然ですが、この地域に限らず国道の他にも北海道道(道道)や地域の自治体が管理する市町村道もあり実際にはさらに複雑な道路網になっています。そこまで表示するとなれば地図がほぼ塗りつぶされることになってしまいますので、ここでは国道のみの表示に留めておきますので、ご理解の上、ご了承いただきたく存じます。
また、道路については、東北海道には高速道路、自動車専用道路も、若干ではありますが整備されております。
しかしながら、東北海道においては国道を含めた一般道路において交通量が多くない路線もあり、高速道路の整備にかける費用を考慮しますと、今後は一般道路の制限速度を見直すことも有効といえるのではないでしょうか。
現在の一般道路の制限速度は60キロであり、市街地などの交通量が多い路線では時速40キロなどで各路線、各地点ごとに制限速度が定められております。それはそれで意味のあることと思いますが、一般道路でも郊外の、比較的交通量が少ない路線においてはその制限速度を上げていくことはできないものでしょうか。
一例ですが、私が以前訪れたことがあるスロヴァキアでは市街地の一般道路の制限速度が時速50キロであり、郊外の一般道路では時速90キロ、高速道路は時速130キロを制限速度としておりました。その他ヨーロッパ各国の制限速度はJAF(日本自動車連盟)のWebサイト内の「ヨーロッパ各国の制限速度」をご参照いただきたく存じます。このようにヨーロッパ各国では各国ごとに制限速度が定められており、モルドバのように住宅地の制限速度を時速20キロとしている国もありますが、概ね日本の制限速度を上回っております。
また、アメリカでは州によって制限速度が異なり、また速度の単位が時速キロではなく時速マイルであって、一般的には市街地で25~45マイル(約40~72キロ)、一般道路で35~65マイル(約56~104キロ)、高速道路で55~75マイル(約88~120キロ)となっているようです。
以上のように考えてまいりますと、時速60キロ、時速40キロという日本の最高速度の制限を今一度見直して、欧米と同程度の制限速度にしてもよいのではないかと考えるのです。
日本でも平成21年に交通規制基準が改正され、一般道路でも時速80キロまで制限速度が引き上げられた例がありますが、東北海道ではまだそのような取り組みが行われておりません。現在の日本の行政制度の中では関係省庁の責任問題になって担当職員の出世に影響するから一気に変更することはまずあり得ないのですが、実験事業でも結構ですので制限速度の引き上げに取り組んでは如何でしょうか。
以上、現状の東北海道の道路事情を、国道について確認し、また将来に向けての提言として、新たな道路を作ることなく制度を変えることでより地域に相応しい交通制度を整備することを提案してみました。
今回の交通事情の面に限らず、東北海道では未来に向けて新たな、そしてその地域に合った仕組みや制度を作っていく必要があり、そのためには地域を知る地元の人々がしっかりと議論できる場を作っていかなければならないと考えます。その上で、将来には地域の自治を今よりもさらに独立させ、そして自らが考え、自らが判断し、そして自らが制度や法律を運用していく体制を構築しなければならないと考えるのです。
2021.09.15
コメント