東北海道の交通事情の現状と未来について(その3 航空編)

当サイトの“東北海道の概要”内「東北海道の規模を土地総面積と人口について検証する。」において詳しく記載しているように、東北海道の土地総面積は北方領土地域を除いて35,583.60km2、北方領土を含むと40,586.70km2であり、ヨーロッパやアジアにも同程度の面積の国々があるほどの、広い面積を有する地域であることはすでに幾度かお話ししております。
そうなりますと、地域内の移動については自動車、鉄道の他に航空という手段を利用することも考えるべきであると考え、今回は東北海道の交通事情の第3弾として航空について述べてまいります。

東北海道地域の航空についての話を始めるにあたり、この地域内の空港の概要を、北から順に確認しておきます。

空港名所在地種類運営者現在運行中の路線
礼文空港礼文町地方管理空港北海道
管理委託:礼文町
[2009年4月9月から2026年3月31日まで休港]
ヘリコプターによる急患搬送を行っている。
利尻空港利尻富士町地方管理空港北海道
管理委託:利尻富士町
利尻‐札幌/丘珠
 (HAC・1日1往復)
利尻‐札幌/新千歳
 (ANA・1日1往復・季節運航:6月~9月)
稚内空港稚内市国管理空港北海道エアポート株式会社
(2021年3月1日~)
稚内‐新千歳
 (ANA・1日2往復)
稚内‐東京/羽田
 (ANA・1日1往復)
紋別空港
(オホーツク紋別空港)
紋別市地方管理空港北海道紋別‐東京/羽田
 (ANA・1日1往復)
女満別空港大空町地方管理空港北海道エアポート株式会社
(2021年3月1日~)
女満別‐札幌/新千歳
 (JAL・1日3往復、
  ANA・1日3往復)
女満別‐札幌/丘珠
 (JAL・週3往復)
 ※ 2021年10月31日~2022年3月26日は週11往復
女満別‐東京/羽田
 (JAL・1日3往復、
  AIRDO/ANA・1日3往復)
女満別‐東京/成田
 (Peach・1日1往復)
女満別‐大阪/関西
 (Peach・1日1往復、
  ANA・1日1往復・2021年度は運休)
女満別‐大阪/伊丹
 (JAL・1日1往復・7月~8月の約40日)
女満別‐名古屋/中部
 (ANA・1日1往復・7月~9月の約75日)
中標津空港
(根室中標津空港)
中標津町地方管理空港北海道中標津‐札幌/新千歳
 (ANA・1日3往復)
中標津‐東京/羽田
 (ANA・1日1往復)
釧路空港
(たんちょう釧路空港)
釧路市国管理空港北海道エアポート株式会社
(2021年3月1日~)
釧路‐札幌/新千歳
 (ANA・1日3往復)
釧路‐札幌/丘珠
 (JAL・1日4往復)
釧路‐東京/羽田
 (JAL・1日3往復、
  AIRDO/ANA・1日2往復、
  ANA・1日1往復)
釧路‐東京/成田
 (Peach・1日1往復)
釧路‐大阪/関西
 (Peach・1日2往復)
釧路‐大阪/伊丹
 (ANA・1日1往復・季節運航:8月)
釧路‐名古屋/中部
 (JAL・週3往復・季節運航:8月)
帯広空港
(とかち帯広空港)
帯広市特定地方管理空港北海道エアポート株式会社
(2021年3月1日~)
帯広‐東京/羽田
 (JAL・1日4往復、
  AIRDO/ANA・1日2往復)
帯広‐名古屋/中部
 (JAL・週4往復・季節運航:8月)

これらの空港を地図上に配置すると以下のようになります。

上記の表と図からわかるように東北海道には8空港(礼文空港は休港)があり、定期便は国内線のみ、ほぼ札幌(新千歳・丘珠)、東京(羽田・成田)との間で就航しております。また、大阪と名古屋については夏季に季節運航がある程度であり、その他の空港への就航はございません。発着数では女満別空港と釧路空港が突出して多いことがわかります。私はこれらの就航路線の設定について、基本的には観光目的の旅行客の利用を見込んだものと考えております。東京・羽田空港については首都圏の旅行者をターゲットとして、札幌・新千歳空港については新千歳空港からの乗り継ぎ客を取り込むため、と想像するのは難しいことではございません。このことから各航空会社が東北海道の航空需要に求めるのは観光客の移動が主なものであって、その他、出張などのビジネスを目的とする需要、さらに言えば物流についても航空貨物の需要には大きくは期待していないように思われます。もしも他の目的の需要を想定するのであれば、北海道内の道央圏、首都圏、関西圏以外の地域にも就航路線は拡大されているでしょうし、夏季のみの季節運航ということもしないでしょう。
一方で、東北海道の地域内で運行する航空路線はなく、東北海道内の交通はその他の交通手段を使用することになります。ただし、鉄道については鉄道を運営する運送機関である北海道旅客鉄道(JR北海道)の経営方針による赤字路線の廃止によって利用できる地域が限られておりますので、道路を利用するしかなく、公共交通機関であればバス路線の利用、そうでなければ自家用車の利用が地域間移動の主な手段であるということになります。

そこで私は、東北海道の交通事情を考えるにあたって、地域内に8か所の空港があるのだから地域内を相互に行き交う路線を設定することを検討する余地があっても良いのではないかと考えます。東北海道内の地域の相互就航、例えば小型機でのコミューター路線などの就航はできないものでしょうか。私は広大な面積を有する東北海道地域の未来を考える時に、自動車、鉄道、そして航空のそれぞれの特徴を活かして地域間で相互の交流を進めることが必要になるだろうと考えております。
東北海道内における航空路線の設定については、採算、収支の見込みを考慮すれば実現に向けてはかなりハードルが高い事業になることは明白であります。私もただ夢物語のように語る気はございません。採算が合わないのであれば無理に就航させる必要はなく、ダメなものはダメと言い切ってしまっても良いでしょう。しかしながら、東北海道地域内では救急患者の搬送にドクターヘリが活躍しております。必要がなければ考えさえしないことも、必要があれば実現に向けて取り組むことができるのであって、たとえ今は必要とされていなくても将来に向けて必ず必要となるときが来るものと考えます。

コミューター路線の例は沖縄県の琉球エアコミューターを参考にすることができるでしょう。
琉球エアコミューターのWebサイトで就航路線を確認してみますと、最も近い距離で北大東-南大東の13km(所要時間20分)、次いで宮古-多良間の65km(所要時間25分)、次いで那覇-久米島の95km(所要時間35分)と近距離でも定期便が運行されております。沖縄では離島間の交通機関が船便か航空便に限られるという事情もあることは承知しておりますが、それでも定期便を運行することができるのはおそらく採算が取れる仕組みがあるのでしょう。前出のWebサイト内に掲載されている琉球エアコミューターの営業実績には2018年度の売上高で54億64百万円、営業費用が50億75百万円であり、営業損益、経常損益ともにしっかりと利益を上げていることがわかります。また、同年の旅客数はおよそ53万8千人、貨物・郵便の輸送量は3千5百トンと公表されております。旅客、貨物双方の輸送力の拡充のために、旅客の席数を減らして貨物室を広く確保した機材(ボンバルディア、DHC-8-400型機カーゴ・コンビ仕様)を導入しており、琉球エアコミューターは地域住民だけでなく観光客、旅行者が飛行機を利用するのはもちろん、同時に貨物の輸送力も強化、拡充することによって地域の生活を支える、いわば生活インフラの一部として機能し、利益を上げているようです。同サイト内の「代表挨拶」の表題にも「地域に根差した事業運営で安定経営に転換」と記されております。
島嶼県という沖縄県の地理的な特殊性もあって、沖縄県全体の経済や文化を航空路線が下支えしているとも言えるのではないでしょうか。

東北海道地域においても、航空需要は旅客だけではなく貨物もあり、小型のカーゴ便を飛ばす、あるいは旅客機の座席数を減らしても、そこに貨物を載せて飛行機を飛ばすことはできないものだろうかと考えております。
また、ドクターヘリの運航実績を活かして、近距離での移動であればヘリコプターを定期運行することはできないものだろうかと考えます。運賃はそれなりに高額になることが予想されますが、東北海道では鉄道も路線バスも決して安価であるとは言えず、しかしながら地域間の移動には長い時間がかかることから、移動時間の短縮にも取り組むべきと考えます。

観光目的の旅行者の利便性を高めるため、言い換えれば観光客を取り込むために飛行機を利用し、航空機関によって多くの人々が移動することは良いことであると考えます。大きな人口を抱える大都市圏との交流も大切ではありますが、行政、民間を問わず地域内での交流の手段として航空を利用することも考えるべきではないかと思うのであります。
将来的には東北海道内でのビジネス目的での地域間移動にも航空便が必要になるかもしれません。むしろ、東北海道内の地域間移動に航空便が有用となるほどに経済的な発展を実現させたい、というのは妄想が強いと思われるかもしれませんが、東北海道の未来を考えればいずれ地域内の航空輸送を考えられるようになりたいものです。これは妄想ではなく東北海道の未来に向けた提言の一つと考えていただきたいのです。

2021.10.13

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